きえんどうという旅 1.Calling

1.Calling「天命」

物語の始まりです。主人公は、きっかけは、さまざまですが、人のとの出会いや、不運な事故、また、自分のなかで聞こえてくる内なる声などきっかけに、これから始まる旅のミッション(生きる意味や役割、使命)を見つけます。

最初に与えられた空の工場が、私の旅のスタート地点。

「この場所を何とかしなくてはいけない」と

ドアを開けた先の工場は、いつも時が止っていた。

動いていない空気は澱み、

西日に照らされた床に落ち葉がたまっている。

焦燥感だけが膨らみ、

何もできない自分に呆れてがっかりする。

そんなことを何度も繰り返し、いつしかドアを開けることもなくなり、

やがては胃の奥の深いところに

消化しきれないストレスが溜まっていった。

状況が変わったのは、突然だった。

まるで導かれるように縁が縁を呼び、

「きえんどう」が形作られていった。

「きえんどう」が生まれたときのことは、よく覚えている。

合わなかったピースが見つかったような、

喉につかえていた小骨が取れたかのような、

いいこと考えた!と声を張り上げて得意がる

子供のような気持ちになった。

「どうせやるのならば、役に立つ場所にしたい」

という想いが私の最初の種だった。

どんなものを売るか・・・ということよりも

どんな場所にしたいかということしか考えていなかった。

この先に待っているのは、キラキラした未来に違いない。

そんな気持ちで、新しい旅へつながる扉を開いた。

※作画:chicaco


きえんどうという旅 はじめに

最初に与えられたものは

使えなくなってしまった空の工場だった。

  

薄暗く、すみには虫の死骸がたまっており、

長くいると澱んだ気に呑まれてしまいそうな気がした。

  

7年後の今、同じ場所に立つ。

  

あたたかな照明に照らされて、心癒される商品が必要な人の元に行くのを待っている。

あの頃の一つ一つの全てが、今ここの私にとって意味があったのだと気が付く。

  

今、私の旅がひとつ、終わろうとしている。

  

  

ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)をご存じだろうか。

  

ジョゼフキャンベルという神話学者が提唱したもので、数々の神話のヒーローの物語にはある共通した一連の流れがあることを発見した。

  

スターウォーズを始め、ヒット映画などにこの手法が取り入れられているのは有名な話なのだが、この一連の流れは実は私たち一人ひとりにも当てはまる。

   

私にとってのきえんどうでの7年はまさにヒーローズジャーニーそのものだった。

  

※つづく  作画:chicaco


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