最初に与えられたものは
使えなくなってしまった空の工場だった。
薄暗く、すみには虫の死骸がたまっており、
長くいると澱んだ気に呑まれてしまいそうな気がした。
7年後の今、同じ場所に立つ。
あたたかな照明に照らされて、心癒される商品が必要な人の元に行くのを待っている。
あの頃の一つ一つの全てが、今ここの私にとって意味があったのだと気が付く。
今、私の旅がひとつ、終わろうとしている。
ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)をご存じだろうか。
ジョゼフキャンベルという神話学者が提唱したもので、数々の神話のヒーローの物語にはある共通した一連の流れがあることを発見した。
スターウォーズを始め、ヒット映画などにこの手法が取り入れられているのは有名な話なのだが、この一連の流れは実は私たち一人ひとりにも当てはまる。
私にとってのきえんどうでの7年はまさにヒーローズジャーニーそのものだった。
※つづく 作画:chicaco