きえんどうという旅 2.Commitment

2.Commitment「旅を始める」

主人公は旅をはじめ、「自分の進む道は本当にこれでいいのか」と、天命を受け入れることができず、旅に出ることへの葛藤や戸惑いが必ずおきます。
また、何かしらの出来事で、最終的には「今に留まるのか、それとも新しい世界へ進むのか」という選択を迫られます。そして、新しい世界への一歩を決断して進んでいきます。

「きえんどう」という名前は割とすぐに思いついた。

仏教用語でもある「機縁」は、簡単に言えば「きっかけ」という意味だ。

「僅かな値遇であっても、それが縁となり開眼し、人生の方向が定まることもある」

まさに人生において縁というものの力を体験したばかりだった私は、

「きえんどう」でつなぐご縁が、その人それぞれの可能性を発動し、

訪れる人が皆幸せになる・・・。

という夢を描いた。

この夢は私をとてもワクワクさせた。

計画はどんどんと進んでいった。

だんだんと多くの人が関わるようになり、

気が付けば「アドバイス」という優しい鎖に身動きが取れなくなっていった。

完全に下準備不足のつけがまわった。

計画が中途半端だったうえに、知識もない私は

あっという間に不安や葛藤でいっぱいいっぱいになった。

先人のアドバイスは、私にとっては救いだった。

こうした方がいいんじゃない?と言われることは全て取り入れた。

自分で決めて進めていたはずだったのに、

出来上がった計画書には

想像もしていなかった絵が描かれていた。

ワクワクなんてとうの昔にどこかに隠れてしまった。

胸のあたりがざわざわとするような違和感を感じながらも、

さらに進んでいく計画に後が引けなくなっていた。

本契約をする数日前のことだった。

勧められて受けたヒーリングのヒーラーさんに

「この計画は失敗するよ」と断言された。

血の気が引き、後頭部をガーンと殴られるような衝撃を受けた。

ショックで体温が下がりガタガタと震えながらも、

「その通りだ」と妙に納得する自分がいた。

「私が変わらなきゃいけない」という想いが胎の底から湧き出てきた。

全てリセットしようと決意した。

というより、せざるを得ないと思った。

全ての責任は自分がとらなくては、と腹が据わった。

本契約直前での白紙撤回の連絡を入れたときのことは

昨日のことのように思い出せる。

沢山のアドバイスを下さり、

時間をかけ知恵を絞ってアイデアを形にしてくれた社長に

「一旦白紙にさせてください」と伝えるのは、

申し訳なくもあり、とてつもなく怖かった。

怒られることを覚悟で正直に思ったことを伝えた私に、社長はこう言った。

「いいよ、君の想いが全く見えなかったから逆に安心したよ。

また一緒に考えよう」

どうしてかずっと出なかった涙が、蛇口が壊れたかのように溢れ出た。


私の旅の一歩目はここだったはずだ。

他人軸でいたことで本来の自分から乖離した私が、

自分軸に強制的に軌道修正させられて踏み出した一歩だ。

まさに自分の力で踏み出した、決断の一歩となった。

作画:chicaco